どなたもが経験したであろうことで例を出すならば、ある品を見て「これが欲しいな」と思ったとする。
価格的にも手持ちの現金で購入できるし、売れてしまったらやっかいなので今買いたいと思う。
けれども何故か今はやめた方がいいような気がしてその場を立ち去る。
数日後なんと、その品がセールで安く売られていた。
思いがけず安く購入することが出来て得をした。

もちろんその逆もあるだろう。
品を見かけて何となく、購入した方がいいような気がしたけれども贅沢であるかのような気がして購入しないでいたら、数日後価格が変わり高くなってしまっていたなど。

このように、欲しいもの、要求に対する人間のカンというものは侮れないものであると思う。
だから、もし迷いがあるのであれば、カンに従うのもまた一つの選択ではないだろうか。

自分の経験談で恐縮だが、あるご依頼について呪術を引き受けたほうがいいのか、それとも様子を見て法的手段など現実的な措置からとっていった方がいいのか迷っていたことがある。
なんとなく、「今呪術は時期尚早ではないか?」と思うところがあり、ご依頼者からの再三の催促にも関わらず、お受けするのをためらっていた。
そんな折、別のことでたまたま目にしたインターネットの情報から新たな対策方法があることを知り、これをお知らせしたところたちまちのうちに解決、皮肉な話だがこちらの出番はなくなった。
お恥ずかしながら実は、その当時依頼が殆どなく、この依頼を引き受けると少しは生活が助かるという状況だったのである。
そのため正直なところ「もったいないことをしたな」とは思った。
が、その方からこちらを紹介していただいたと、依頼がひっきりなしにくるようになり、結果的に生活に困るという状況からは脱出することが出来た。
その方はいろいろな人脈をお持ちであり、ことあるごとにお話をしていただいたようである。
(ただし本当に呪術を依頼された方については、「呪術を依頼されたことは口外しないで下さい」と口止めさせていただいた)

また、こんなこともあった。
呪術を行う過程でどうしても身を守るものとして宝石が必要となり、いろいろと探したが思うように見つからないということがあった。
高価なものを探すのでもなく、珍しい宝石でもないので妥協しても十分構わなかったのだが、なんとなく「これ」というものが見つからず迷っていた。
そうしたところへ、あるつてから「よかったら」と新品のアクセサリーを頂く機会があった。
それが驚いたことに、今自分が欲していたものズバリの宝石だったのである。
いただいた宝石は大変に重宝している。

どちらも「単なる偶然」で済ますことは可能である。
私も「カンが大いに役立った」とは思っていない。
だが、「何となく思う」ということに従うのもまた悪くはない選択肢であり、時に自分を救う可能性があることも覚えておくのは悪くないだろう。